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想う、感じる、伝える。-⑧

-聴覚-

ずいぶん以前に、ある遊具メーカーと共同で音だけのお化け屋敷にトライしたことがある。一時は結構流行ったが今ではあまり見かけなくなってしまった。営業効率の問題もあるのか?

室内はストーリーに合わせたそれらしき内装が施してあるが、客が入場し着席すると一転暗闇となってヘッドホンからの音だけでストーリーが展開する。

背後に忍び寄る怪人の足音。息遣いが耳にかかるほどの近さで低く呟く。振り落とされる凶器の風切り音。特に背中側は人間とって一番無防備であり恐怖は倍化するらしい。人はある感覚機能が損なわれたり劣化したりすると、他の感覚が鋭くなるということは良く聞く。音以外の情報がないと神経が集中して実に臨場感が溢れる。空間の広がりや、対象との距離感まで精度高く感じ取れる。

これもかなり以前のことだが、ある実験的なイベントの話を聞いたことがある。真っ暗闇の空間の中に簡単な迷路(順路)をつくり、来場者にはまったく視覚を奪われた状態で何とか出口にたどり着いてもらうという企画だ。途中には軽飲食のコーナーも在ったようだ。

視覚を遮断して、聴覚、触覚、嗅覚、味覚だけで課題をクリアするのだが、ルールがひとつだけあって、グループでの纏まった参加は禁止される。連れ立ってきた人はばらばらにされて時間差で入場する。つまり自分の近辺は見ず知らずの人ばかりという状態である。

手探りで壁を伝い、前後の人の気配を窺い、声を掛け合って出口を目指すのだが、このような状況下では、すごい速さでコミュニケーションが進むらしい。すぐに前後何人かで手を繋ぎあって協力するようになる。顔も見えない同士が自己紹介まで済ませて、ゴールに至る頃には幾つもの濃密なグループが生まれるとのことだった。

ヨーロッパでは数年前から「暗闇レストラン」なるものがあるらしいが、最近日本でも聞くようになった。私も一度トライしてみたいと思う。

聴覚の入り口から入ったが、出口では視覚と味覚になってしまったようだ。
  
 
= ピー・オー・ピー「見本市展示会通信」’09年2月1日号掲載 =
 
展示会コミュニケーションサイト 「展コミ」
http://www.eventbiz.net/ 


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