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ブレッソンに学ぶ空間写真

今日は、空間デザインとは一見、関係のない、ある高名な写真家の話です。その写真家の作風を通じて空間と写真という視点で書きたいと思います。少し長文になりますが・・・。


■ブレッソンとは?
さて、皆さんはアンリ・カルティエ・ブレッソンという写真家をご存知ですか?
1952年に出版されたアメリカ版の表題『決定的瞬間(The Decisive Moment)』という写真集で世界的に有名になったフランスの写真家です。その作品は誰でもが一度は目にしたことがあると思います。


現在、東京国立近代美術館で開催されていれる「アンリ・カルティエ=ブレッソン知られざる全貌」
でその作品群を見ることができます。写真家の作品が美術館で開催されること自体が非常に稀なことです。これは彼の歩んできた生涯と少なからず関係があるように感じます。


写真家として世界的に有名なブレッソンですが実は彼は、若き日は画家を志していました。ところが当時としては画期的な小型カメラ「ライカ」と出会い、その「ライカ」で撮った写真で世に認められ、その後、約30年間、写真家として精力的に活動しました。60歳を越えた1970年頃から2004年に95歳で亡くなるまでの晩年は写真ではなく再びドローイングに専念する人生を送りました。


■ブレッソンの手法
画家をこころざし、写真家として世に出て、最後は画家として生涯を終える。普通の写真家とは違った生涯を送りました。これが彼の作品の根底に流れる類稀なオリジナリティとなっています。画家の目を持った写真家とでも言いましょうか・・・。
私は彼のこの特異な生涯に興味を持ち、特別な思いで彼の作品を見てきました。彼の多くの作品はまず、その完璧なまでに計算された幾何学的な構図が目に飛び込みます。


彼のインタビュー映像の中でも完璧な構図とタイミングを計るのに「もう少し・・もう少し・・そう!そこだ!」と言う言葉で撮影時の心境を語っています。つまり完璧な構図を頭に描き、その瞬間が訪れるタイミングを待つ。そういった手法で多くの作品を残してきました。もちろん、画家として学んだ経験と写真家としての才能が高い次元で結実した結果であって誰にでも真似出来ることではありません。


純粋に写真家を目指した写真家や写真の世界だけを見てきた評論家が彼を評価するのと少しでも絵の勉強をした者が彼を評価するのとではその見方が違います。
写真家としてだけ見れば二度と遭遇できないほどの決定的瞬間を見事に捉えた天才フォトジャーナリストとして有名ですが、私はその根底には画家としての優れたデッサン力や平面構成力、光の捉え方などが深くかかわっていると感じています。これが単純に写真家を目指した写真家と決定的に違う点です。


現に彼は自分にとっての写真とは「一瞬にして現実を描き出す作画法」と語っています。それがそれまでの手のかかる大型の写真機ではない「ライカ」という優れた小型カメラとの出会いが生んだ奇跡という側面も相まって、写真やカメラ、絵画などに関わる様々な世界の人々に影響を与え、高い評価を得ている要因となっています。


■空間写真との関係
それではそのブレッソンの作品と空間写真とはいかなる関係性があるのでしょう?
ここからは私のまったくの私見ですが・・・。


ほとんどがモノクロのブレッソンの作品は色彩がない分、構図や光の状態がより鮮明にかつ力強く浮き彫りになります。現代の写真は特別な意図が無い限りほとんどカラー写真の世界です。平面構成や光の状態に加え、色彩構成など、より多くのファクターが関わってきます。しかし、原点は同じです。ブレッソン流に言えば優れた空間写真は「絵画的な構図」を踏まえ、「一番良い光の状態」を捉えることです。


「絵画的な構図」というのは適当な言い方が見つからなかったのでちょっと分かりにくいかもしれませんが、つまりデザイナーが意図したデザインコンセプトそのものです。空間デザイナーは2次元で考え、様々な思考と検証を繰り返し、3次元へと昇華させていきます。それをまた2次元である写真に納めるわけです。絵画的なという中にはいわゆる幾何学的であるとか美しい配列的であるという意味も内包しています。


「一番光の良い状態」とは現実の空間として意図したデザインが一番美しく写る瞬間です。それは自然界における太陽と同じように空間においては照明光というものが大きく影響します。モノには必ず光と影が存在します。人工的な太陽を作り出すことが空間デザインにおける照明光の役割です。これらをどう解釈し、どう捉えるか?です。


空間写真はそれをデザインしたデザイナーのものです。決して写真家だけのものではありません。写真家がやるべきことはデザイナーが創りだした空間のコンセプトを見極め、理解し、写真という表現手法でデザイナーの脳内にある未来の記憶を呼び起こすことです。目の前の空間だけをただ単に切り取ることではありません。空間写真の撮影者は単なる写真家ではなくデザイナーと同じクリエイターであるべきことが理想です。


ブレッソンが単なる写真家ではなくアーティストであったように・・・。


■ブレッソンに学ぶ
私とブレッソンを同列に扱うのはおこがましいことですが、私もかつてデザイナーであり、学生の頃はデッサンや平面構成、色彩構成などを学びました。20年ほどデザイナーやディレクターを経験し、その後あるきっかけで写真家として現在に至っています。日常的に空間を撮影するとき、常に感じることはデザイナーとしての経験とそこで培われた視点です。そういった意味でもブレッソンの作品からは学ぶべき多くの点と共感する部分とが多々あります。


ノートリミングの完璧な構図と光の捉え方。これに現代では色彩構成。これが、デザイナーが意図した空間をより美しく、そしてより印象的に伝えるための空間写真のポイントである。と、ブレッソンの作品から示唆されているように感じます。


画家を志した写真家ブレッソン。日常をアートに変えた写真家とも呼ばれます。空間デザインに関わる者としてその生涯と作品群は様々な示唆を含んだものと言えます。彼の作品は空間と写真と絵画と、そしてデザイン・・・これらの世界に通じる何かを感じます。デジタルフォト全盛の時代ですが本質的なモノゴトは先人から学ぶこともまだまだあるということを改めて感じます。


ただし、私個人としてはブレッソンの代名詞的な見事なまでの構図のスナップ写真もいいのですが、著名な画家や作家、役者などを撮ったポートレートにより魅力を感じます。ここでも背景を効果的に取り込んだ完璧な構図と絶妙なタイミングが見て取れます。そしてブレッソンの人柄も・・・。


SWCでした。

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