スタッフレポート

「チームで取り組む文化施設づくり」 -お客様とスタッフとで考える、施設を利用する人たちのこと-

冷静沈着な常設物件のスペシャリスト 吉本ディレクター

2008年春、岩手県奥州市で開館した「奥州宇宙遊学館」は、公募型プロポーザルコンペで受注させていただきました。
この施設は、一度は取り壊しが決まった国立天文台の旧水沢緯度観測所本館の建物を、市民運動で市への譲与とし、耐震改修を経て、保存・活用へとしたドラマがあり、奥州市の「賢治の愛した天文台~Z再生プロジェクト」という基本方針書も非常に魅力的で、我々のチームで是非お手伝いしたいと密かに燃えました。

提案した「次代を担う人材が育まれる施設づくり」を具現化するためには、より長く施設が生き続け、奥州市の方々、子どもたちをはじめ、何回も訪れていただけることが重要だと考え、魅力あるコンテンツをなんとか創り出そうと会議を重ねました。体験・体感型の展示を目指し、更新性に優れ、且つランニングコストを抑える工夫には注意を払いました。例えばワークショップやアウトリーチといった活動に役立つ展示ツール(遊学キット)は、まず壊れにくいこと、壊れる場合は子どもたちが傷つかない壊れ方をすること、壊れても運営側で直せることを条件に、パーツユニットを設計し、かつ安価で手に入りやすい既成品パーツを要所に採用するなど工夫しました。
大正時代の建物の雰囲気にあった空間を実現するために家具調のデザインを取り入れ、色調や取手の仕様などをこだわり、その場に佇むと往時の雰囲気を味わえるようにも工夫しました。さらに展示解説の誘導役として、「風の又三郎」をモチーフにした子どもたちにも親しめるキャラクターを開発、デザインもしました。

進行は市、検討委員の方々とワーキンググループ形式でさせていただき「奥州市の子供たちにどうアプローチしていくか」「こういう展示は子どもに理解できるのか」などの議論を繰り返しました。「夢を描く」段階から「夢を形にする」段階になると、なかなか結論が出ず、次回に持ち越してまた議論もしばしばで、夢と時間と予算のはざまで決断していく時に、全員が利用者を第一に考えていたことが大変よかったと思います。
行政の方々、監修される方々、市民を代表される方々、全員一体となってひとつの目標に向かう共同作業は、出来上がるまでは試行錯誤の繰り返しで「生みの苦しみ」を味わいますが、やり遂げた時の充実感は、文化施設の業務だからこそ味わえる特別なものがあります。
しかも苦労したことは、チームのスタッフひとりひとりの思い出となり、利用者への気遣いとなり、その経験が必ずまた自信となって返ってくる点も、私がここまで関わってこれている醍醐味かもしれません。

吉本ディレクター
奥州宇宙遊学館
外光の入る趣のある展示室

経験豊富な万能型 福田プロデューサー

-創って終わりへの挑戦―

文化施設の展示構想、企画、デザイン、設計、施工という主に行政機関の業務をお手伝いする分野に携わり、早や20年以上。私はよき先輩にも恵まれ、弊社の常設物件に様々な形で関わってきました。
文化施設の業務は、チームを組み、いわゆる衆智を集めての協働作業をします。構想から開館まで短くても1年以上かかることは普通で、「長い時間その業務に関わるスタッフのモチベーションを維持していくこと」と「集めた衆智を根気強く整理反映すること」が非常に大切だと考えて日夜取り組んでいます。

開館を前に引き渡して、契約内容の業務が終わり、我々は結構燃え尽きているのも事実ですが、その文化施設のスタートは、まさに開館の瞬間からはじまります。
近年、指定管理者制度の導入などを背景に、文化施設の構想、企画段階では「開館後の運営」が以前より意識的に、より活発に議論される場面が多くなり、全国的に文化施設が利用者を本当に強く意識している傾向と捉えています。

後日談ですが、奥州宇宙遊学館のコンペ案で、弊社が頭ひとつ際立ったのが「利用者を意識した開館後の運営提案」だったとお聞きした時はうれしかったですね。
我々のチームは創って終わりではなく、ちゃんと開館後の利用者を見据えているということを評価していただき、この期待に精一杯応えようと思いました。

私は、スタッフを集め、チームを作り、各々のスペシャリストがお客様(主に行政機関の方々)や監修される方々とどう連携してほしいかを考え、よいコラボレーションができる道筋をつけるという意味のプロデュースをさせていただいてます。運動技能の用語にオープンスキルとクローズドスキルというものがありますが、文化施設の仕事に当てはめれば、スペシャリストの持つ専門性が高く確実な基本技術(クローズドスキル)とお客様とコミュニケーションし、刻々と変化する内容を判断し対応していく(オープンスキル)をうまく組み合し、利用者の笑顔が見えた時が最高に楽しく、一度この感激を味わうとやめらないという因果なものです。これからも開館後の運営される方々や利用者の声に耳を欹て、創ってはじまる文化施設の弊社のスタイルを模索していきたいと考えています。

福田プロデューサー
来館者の笑顔
遊学キットで遊んでいる様子。館の方々が非常に熱心です。

レポーターの意見

歴史的建造物を有効活用し、ミュージアムとして新しいコミュニティー施設に再生され、次世代へとつないでゆく。何ともロマンあふれる、興味深いプロジェクトと感じています。
廃校を利用してチルドレンズミュージアムをつくるなど、ムラヤマは以前からこのような再生プロジェクトに複数参画してきました。環境問題などの観点から、今後このような計画がますます増える予感がします。

来館者・運営・施設管理などなど、その施設に関わるさまざまな方の視点に立ち、その環境に適した最善のコミュニティー計画を、豊富な実践経験からご提案の出来る“熱い”スタッフがムラヤマにいます。
チームワークで皆様の最善策をいっしょに考える、ムラヤマの“誠心誠意のおもてなし”を是非お試しください。