
写真を本格的にやっている方たちの間では比較的知られていることですが、写真にはマジックタイムという言葉があります。夕暮れ時、太陽が沈み、夜の帳が下りる、その直前、まだ少しだけ沈む太陽の光が残り、空の青さが夕日の赤紫を含みながら最後にほんの少しだけより美しい青さを主張する瞬間。
その時間帯を写真家はマジックタイムと呼びます。この時間帯は空間、特に屋外の建築物などを撮る場合、それらが一番美しく映える瞬間になります。あたりに僅かに残る光が建築物のディティールを映し出し、室内や室外に灯る人工光が華やかさを加え、深い青さが残る空が最高の背景になります。
この自然からのプレゼントはほんの数分間しか味わえません。空が漆黒の闇になってしまうと建築物やあたりの様子はもう正確に映し出すことはできません。ただの夜景になってしまいます。儚い瞬間です。ゆえに美しいのです。

空間を撮る写真家にとってはこの数分間が勝負の分かれ目となります。一番美しい瞬間を逃さないように常に集中力を持って臨みます。その日の天候や季節によっても色彩の深さや鮮やかさは違います。しかし、何度撮ってもそのつど感動を与えてくれます。仕事で撮影はしていますが自分自身が美しい!と思え、感動する瞬間は誰が見ても美しい空間作品になります。
ところで、この瞬間は写真を本格的にやっている人だけのものではありません。ただ、この瞬間を普通の人たちは意外と知りません。気が付かずに見逃しているのです。撮影に立ち会っているデザイナーですら、必ず、と言ってよいほどモニターに写しだされた絵を見て驚きます。
でもデザイナーが手にしている普通のコンパクトカメラで同じ瞬間を私と同じように撮るとさらに驚きます。意外と撮れてしまうのです。ちょっとしたカメラの設定と撮り方次第で同じような写真は撮れるのです。要はその瞬間を意識して感じ取れるかどうかです。

ここで詳しい設定はあえて記しませんが、今度からこの瞬間を意識して空を見上げ、手にしているカメラで撮って見てください。カメラはデジカメでも携帯でも何でもいいのです。自然からの素晴らしいプレゼント、儚い瞬間に触れられると思います。
もっと美しい瞬間をきちんと撮りたいと思う人は少しだけ勉強してみてください。マジックタイムでサーチしてみれば撮影ノウハウや美しい写真を見ることができると思います。
SWCでした。