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〈感動ノート page.13〉感動は「与えられる」もの? ウィーンの年越しに学ぶ、ゲストを「空間の一員」にする仕掛け

感動ノート

家でのんびり過ごす日常から、異国の「お祭り騒ぎ」へ

今回お話を伺ったのは、関西支社でテーマパークの設計を手がける西井さん。これまで日本で静かに年越しを過ごしてきた西井さんが「海外の年越しを体験したい」という好奇心から選んだのが、オーストリア・ウィーンの年越しでした。

「雑誌で見た、オーケストラが演奏するドナウのワルツに合わせて、街中が踊りだす光景が素敵だと思いました。私も実際にその輪に加わることで、ただの観光客ではなく、空間の一員になれる高揚感を味わいたかったんです」

伝統ある音楽と熱気が一体になる光景への憧れと、設計者としての直感が、西井さんを異国へと突き動かしました。

コラム「感動ノート」について

ムラヤマでは「感性豊かな社員」育成の一環として、毎年、「感動体験支援施策」を実施しています。本コラムでは、この施策を利用した社員のレポートの中から気になる感動体験をピックアップ。体験者とともに様々な心の動きや、新たな感動を生み出すためのヒントなどを探っていきます。
感動体験支援施策の詳しい内容については〈感動ノート page.00〉からどうぞ。

普段の街角で繰り広げられる「非日常」の音楽フェス

現地に足を踏み入れると、そこには日本の常識を覆す圧倒的な光景が広がっていました。

「市内に大小7カ所のステージが組まれ、ジャンルの違う音楽が奏でられていました。町中の人が踊り、盛り上がっていて、じっとしている人が誰一人としていないんです。ただそこにいるだけで楽しく、独特な空気感が少し不思議でした」

普段誰もが歩く「日常」の街路で、音楽フェスのような「非日常」の熱狂が自然に繰り広げられている。空間演出に携わる西井さんだからこそ、現地の圧倒的なエネルギーに深く心を動かされました。

「恥ずかしい」を忘れて誰もが当事者になる

なぜ、これほどの熱狂が生まれていたのでしょうか。西井さんは、参加者の「心持ち」の違いにその理由を見出します。

「見慣れた日常の中では、街中で踊り出すような状況には周囲の目を気にして『恥ずかしい』と感じてしまいがちです。しかし現地では、誰もが一歩引くことなく、全力で『当事者』になり空間を楽しんでいました」

「もしあの時、いつものように恥ずかしがって一歩引いていたら、この感動には出会えなかったと思います」

恥ずかしさを捨てて自分から輪へ飛び込む。感動を与えられるのを待つのではなく、自ら没入していく「当事者意識」こそが、熱狂を生む原動力でした。

緊張をほぐし、人々を夢中にさせる「選択の余地」

ムラヤマの仕事(イベントやディスプレイ)においては、訪れたお客さんをいかにして空間へ積極的にコミット(参加)させるかが重要になります。西井さんはウィーンの年越しで、まさにその「当事者意識」を自然と引き出すためのヒントを見つけました。

「ウィーンでは、ステージの規模が大小さまざまに設計され、観客は自分の好きな場所を選んで、思い思いに踊っていました。参加者側に選択肢を用意することは、空間へ深く没入してもらうための重要な要素なのだと実感しました」

空間を作る側が一方的に押し付けるのではなく、自らの意思で選べる「余白」を残すこと。人それぞれ楽しむ温度感は違うからこそ、少人数でしっとり音楽に浸りたい人も、大勢で盛り上がりたい人も、それぞれの温度感に合った受け皿を用意する。そうすることで、参加者は気負うことなく自然と空間に入り込むことができ、「恥ずかしい」といった不安や緊張から解き放たれます。このような配慮が、人々を空間に深く引き込む鍵だったのです。

街中に組まれたステージ

全員が「当事者」になれる空間づくりへ

誰もが心のどこかに持っている「恥ずかしさ」の壁を壊し、訪れた人みんなに「自分もこの空間を創り上げる一員だ!」と感じてもらうことは、空間づくりにおいて非常に重要であり、西井さんが目指すところでもあります。

今回、ウィーンの地を訪れ、自ら「恥ずかしさ」の壁を壊す経験をした西井さんは、ゲスト一人ひとりを「空間の一員」にするためのヒントを見つけました。日常の中に非日常をうまく落とし込み、訪れた人を「観客」からそれぞれの温度感に合わせて自由に楽しめる「一員」へと変える環境づくりこそが、より深い感動を生むのだと改めて感じたのです。

日常の枠を一歩踏み出したからこそ得られたリアルな気づきを胸に、訪れる人の心を動かし、誰もが夢中になれる空間を目指す西井さんの挑戦はこれからも続いていきます。

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